Steam Directの登場とインディゲーム - PCゲーム Advent Calendar 2018
今回の記事はPCゲーム Advent Calendar 2018 1日目の投稿です。
お題は「Steam Directの登場とインディゲーム」です。
2017年から始まったSteam Directについて、インディゲーム開発の話題を絡めてお話しします。
始めに
まず前提として、僕はSteamでゲームを出したこともなければ、個人で開発したゲームをリリースした事もありません。
が、将来的にはそうしたいと思っているので色々と気になる事をこのブログにまとめており、今回の記事もその一環です。
なるべく間違った情報の無いように努めましたが、個人の主観と推察が多く含まれる記事なので予めご了承を。
Steam Directとは
2017年6月から始まったSteamの販売登録システムです。
それ以前のSteam Greenlightでは、新規開発者はユーザー投票&Valveによるピックアップで選ばれた場合にゲームを販売出来るという仕組みでした。
これがSteam Directに変わり、新規開発者はSteamworks登録後にValveによるゲームの審査が通れば販売出来るようになりました。
ユーザー投票というプロセスが無くなってValveによる審査だけになった形です。
この制度変更の目的は簡潔に言うと、「販売までのプロセスを合理化して世界中の開発者がゲームをリリース出来るようにする」との事。(出典:Steam Blog :: Closing Greenlight Today, Steam Direct Launches June 13)
これにより、法人ではない個人でも難なくSteamでゲームをリリース出来るようになりました。
Steam Direct開始後の影響
そしてSteam Directが始まり現在に至る訳ですが、この1年余りの間にも様々な話題がありました。
まず大方の予想通りSteamでリリースされるゲームの数が増加したようです。
下図は公式ではなく外部のデータですが、それを考慮しても制度変更でリリース数が増加した事は間違いなさそうです。
(引用:Steam in 2017 – Steam Spy)
これに関連して、低品質ゲームも増えたのではないかと言われる事もありますが、これに関しては断定が難しい話なのでなんとも言えません。
ただ、ガイドラインに沿っている限りどんなゲームでもリリース出来る、との説明通りに様々なゲームがリリースされた結果、Valveの審査をパスしても後々に問題が発生するケースはあったようです。
代表的なのが、Hentai系ゲームでの性的描写に対する扱いや、簡単に審査をパス出来る事を利用したトロール行為などです。
これらに関してはそもそも審査基準が案件によってバラついていたり、ユーザー側でそれらのゲームを区別する手段が十分に用意されていませんでした。
このような話題が賑わった結果、Valveが対応して改善に向かっているようです。
(結果的に、違法行為でない範囲であれば全て容認、但しトロールはValveが排除するという方針になり、フィルタリングも強化されました。)
個人的には、Steam Directがデジタル配信プラットフォームとしては「マーケットプレイス」に近い自由市場になっている以上、今後もこのような問題は起こると考えます。
問題はValveが如何に管理していくかですが、これはスタッフに頑張ってもらうしかありません。とは言え、リリースされるゲームが増え続けている現状では難しいと思います。
そう考えると、後はリリースする側の開発者と、購入するユーザー側で意識を高めていくしかありません。
ゲームを買うのに意識を高めるってなんだよって話ですが。
現在のインディゲームとSteam Direct
さて、ここからはインディゲームの視点になります。ユーザーよりも開発者寄りの視点です。
最近はインディゲームの数が増えている気がします。というか増えています。
が、僕個人としてはこの流れにSteam Directは関係ないと考えています。また、インディゲームが増えているというより、その開発者の数が増えていると思っています。
現在ではAmazon Lumberyard・CryEngine・Unity・Unreal Engine等の汎用エンジンが一般化された上に、開発に必要なプロレベルのツールがもはや一般人でも触れるようになっています。
以前までは法人向けのみだったツールが今やインディ向けの低価格ライセンスを出している時代です。
また、それらで作成したゲームを販売する手段も増えました。
Steam以外のデジタル配信プラットフォームは既に複数ありますが、それらの中にインディゲームをメインとするものもあります。
ゲームを独力で作り上げるだけでなく、出来上がったものを販売する所までハードルが下がってきているのが現状です。
そして着実にインディゲーム市場は膨れ上がっており、既にレッドオーシャン化しているとまで言われています。
Access Accepted第570回:GDC 2018に見る,欧米インディーズゲーム市場のレッドオーシャン化 - 4Gamer.net
Steamのインディーゲーム市場は“ポストアポカリプス状態”なのか?悪化し続けるマーケットを関係者らが観測 | AUTOMATON
ただ配信するだけでなく、マーケティングをしなければ他のゲームに埋もれてしまうというのが現状のようです。
これはSteamでも同じ状況にあると思われます。
そしてこれから
Steam Directはデジタル配信プラットフォームとしては、その規模や参入障壁から見てとても魅力的ですが、マーケティングは開発者が自ら行わなければなりません。
開発者は明瞭な情報発信をし、ユーザーがその情報を上手く取捨選択出来なければ良好なエンゲージメントは起こり得ないでしょう。
しかしこれはSteam Directの方向性からして当然の事です。
Steamの販売制度がGreenlightからDirectへ変わったように、Steam Direct自体が別のものに置き換えられない限り、この状況が続く可能性は高いでしょう。
なんだか悪い事ばかり書いている気がしますが、僕はSteam Directを批判したいわけではありません。
むしろ、インディゲームを気軽に世に出せるようになった事を嬉しく思っています。
これは別に説明しなくても伝わる気がするので最後まで触れませんでした。
ただ、自分で作ったゲームをいずれ世に送り出したいと考えている人間にとっては、その送り出す先が気になります。
デジタル配信というのはあくまで手段であって、開発者がユーザーへゲームを届ける事が目的です。なのでその目的を果たせるかという点は非常に重要な事なのです。